代理出産

代理出産の現状は日本では否定的なのが現状


代理母出産を、そのものを規制する法制度は現在まで未整備となっているが、代理母出産については、生殖補助医療の進展を受けて日本産科婦人科学会が1983年10月に決定した会告により、自主規制が行われているため、国内では原則として実施されていない。

この制度の不備を突く形で、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が、国内初の代理母出産を実施し、2001年5月にこれを公表した。

また、タレントの向井亜紀が国内の自主規制を避ける形で海外での代理母出産を依頼することを大々的に公表し、これを実行した。

そして、これらの事件により、代理母出産は、その是非も含めて社会的な注目を集めることとなった。

このような状況を受け、厚生労働省及び日本産科婦人科学会は対応策の検討に乗り出したが、その結論は代理母出産を認めないというものであった。

しかしながら、厚生労働省は上記報告書の法制化を公表したにもかかわらず、これを実現できず、また、日本産科婦人科学会の会告は同会の単なる見解に過ぎず、強制力を持たないため、代理母出産の実施に歯止めをかけることはできなかった。

現状での裁判事例の流れ


向井亜紀と高田延彦夫妻が2003年に代理母出産によって得た子供を養子ではなく戸籍上の実子として扱うよう求めた裁判では、東京都品川区は出生届を受理しなかったため、夫妻側は処分取り消しを東京家裁に申し立てた。
(2005年11月に却下され即時抗告)

事案について、9月に東京高裁が、1審の決定を取り消し、品川区に出生届を受理するように命じた決定を下した。
(但し、2007年3月23日の最高裁決定により、この東京高裁決定は破棄されている)

このような事例や、10月に根津八紘医師が特殊な代理母出産(年老いた母親に女性ホルモンを投与し娘のための代理母にした、というケース)を実施したことを公表した事例が発生し、それまでも事例の積み重ねにより徐々に認知度を高めていた代理母出産が、再度社会的な注目を集めることとなった。

なお、代理母出産に係る事態を収拾できなくなった厚生労働省及び法務省は、2006年11月30日、日本学術会議に代理母出産の是非についての審議を行うよう依頼を行い、同会議が審議を継続しているところである。

しかし、その間にも、日本弁護士連合会が代理母出産を禁止すべきという2000年の提言の補充提言を発表したり、根津八紘医師が代理母出産の法制化に向けた私案を公表するなど、事態は混迷の様相を深めている。

代理出産に対する批判と反論


現在の日本の最高裁判例においては、「母子関係は分娩の事実により発生する」(最高裁判所第二小法廷昭和37年4月27日判決)との判断が示されており、遺伝子上は他者の子であっても代理母の子として扱われる。

このため、代理母と子との間で相続上の問題が発生することが懸念されている。

遺伝子上の親を実親として認めさせようという動きもあるが、生まれた子が依頼者・受託者双方と遺伝子上のつながりを持たないケースがあり、単純に遺伝子的なつながりのみで親子関係を確定することはできない。


批判派は

・人間に許される行為ではないという意見
・公序良俗に反しているという意見
・女性蔑視を助長するのではないかという意見
・母性本能を軽視しているという意見
・妊娠出産に対するリスクを軽視しているという意見
・障害者差別を助長するという意見

など多岐にわたっている。

これらの批判に対する反論もあるが、生殖問題の医学的問題ととらえるものと倫理面での意見が対立するという構図となっているが、決着を見るにはまだ時間を要する問題のようだ。

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